代替案:また日は昇る計画
周囲の若い人たち(リソースが限られているのできわめて少ないサンプルだが)に訊いてみたところ、例えば昭和50年代生まれの連中にとって、「昭和30年代的風景」は、たとえば僕ら昭和30・40年代生まれの連中が感じるような「ノスタルジー」を必ずしも喚起せず、彼ら/彼女らは、むしろ漫画に出てくる風景とか、テレビで見た風景とか、両親の思い出話、というような「2次風景」として見ているようなのだ。
そうだとすると、ある景観が「ノスタルジー」を感じさせる要素は、年齢や世代に対する相対的な時間差なんじゃないか、という気がするわけだ。昭和30年代商品がターゲットにできる「ノスタルジーマーケット」は、ある限られた世代層であって、それは年を経るごとに推移してしまうかもしれない。つまり、「特定の時代のテイストの郷愁感」の賞味期限は意外に短いかもしれない。
時間性を欠落させている(ずっと夕暮れのまま)というのはもちろん、昭和30年代商品の戦略ではあって、なぜならそこに郷愁を感じ、惹き付けられる人たちが味わいたいのは「あの日」だからである。
でも、「ずっとあの日のままであり続けている昭和30年代」って、昭和30年代的にヘンじゃないだろうか。だって、そもそも昭和30年代というのは停滞とはほど遠い「激動」の時代である。55年体制が成立し、道路公団が発足し、神武景気が来て、水俣病が確認されて、岩戸景気が来て、三池争議があって、ベトナム戦争が開戦し、安保闘争があって、カラーテレビが放送開始されて、キューバ危機があって、締めの39年に新幹線開通と東京オリンピックがあった。30年代的風景の「貧しさの中の豊かさ」っぽい輝かしい「感じ」は、「頑張って働けばもっと豊かになる」という見込みと希望に支えられていたのだ。明日はもっと良くなる、という手応えのないまま、縁側や路地裏やガード下に甘んじていたわけではない。
そういうわけで、「30年代」に固定するのはやめて、いっそ「50年前村」にしたらどうだろう。時代設定はあくまで相対的で、つねに「現在から50年前」が再現されているという。
今年は2005年だから、「50年前村」はちょうど昭和30年。これから9年後に行ってみると、「50年前村」はオリンピックで沸いている。さらに9年後の2023年、「50年前村」はオイルショックで呆然としている。それから15年くらい経ったころ、「50年前村」はバブル真っ盛りで、路地の町家は地上げで取り壊され、空き地が目立っている。さらに15年くらい過ぎると、「50年前村」は不景気ながら都心再開発が盛んで、コンビニや100円ショップに変わった昔の駄菓子屋の向こう、再開発された「怪しい洋館」跡地に超高層マンションがにょきにょき建設されていたりし、そういう景色を見て、そのころ50歳代に突入している僕の長男のような21世紀生まれの客が「ああ、こんなんだったよねーなつかしー!」と言うのだ。


コメント
自分は田舎の新興住宅地(街ではない)でバス通学の鍵っ子だったので、クレしんやその昭和30年村で言われるノスタルジーには程遠い生活を送っていたのでした。だから、昭和40年代生まれとはいえ、あの風景に郷愁を覚えることはないのであります。あれは、都市生活者の幻影なのであります。だって、自転車で行動できる範囲には田んぼと雑木林と建売住宅と土建屋の資材置場ぐらいしか無かったんですから。ついでに言うと、30年前とまだそれほど風景が変わっていないのはとっても秘密。日々、ナバロンの蟻の巣作戦を繰り広げた資材置場は鬱蒼とした雑草に覆われた空き地のままだし。
50年前村は面白そうですねぇ。毎年行かないと、見逃しちゃうという時限式のほうが集客はありそうですよね。リアリティを出すなら工事してたっておかしくも何ともないし。(笑)
Posted by 黒庭師@架空庭園 at 2005年8月 9日 16:25
風景として「工事中をする」係、として就職しませんか。
そしたら僕は隣で「設計中をする」係やります。
つねに「設計中」だから、渡す図面はいつまでたっても「まだ途中」。
途中図面なのに、「もう発注間に合わないよ。あとクレーンもいなくなったから重いの上がんないから」なんて怒られずにすむという(←いやそれは違)
Posted by 石川初 at 2005年8月 9日 22:03
ええーっ、何時までも竣工しないのはいやだなぁ。飽きっぽいから。図面は途中でもいいですよ。樹木は苗木から育てていくのでクレーン要らないし、植える木育成係もかねてくれれば。
Posted by 黒庭師@架空庭園 at 2005年8月10日 01:30
終わりのない工程表と、1年ごとに竣工しては解体してるのと、どっちがいいでしょう。
Posted by 石川初 at 2005年8月10日 12:12
会社的には終わりない工程表でしょうか。バブルの時にそんな事業計画をお持ちの方もいらっしゃったようですが。
解体はしないのです。リサイクル法やなんたらかんたらの手続きがエライ面倒くさいので勘弁してください。
Posted by 黒庭師@架空庭園 at 2005年8月10日 22:46
そうすると「終わりなき増築」ですな。
Posted by 石川初 at 2005年8月11日 21:03
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